警察庁、高速道路の最高速度を100km/hから120km/hに引き上げる方針を発表

警察庁は2016年3月、「見通しが良く設計上の想定速度が120km/h以上」、「事故の発生が少ない」、「実勢速度が100km/h以上」、「渋滞の発生が少ない」等の条件を満たした区間に限り、高速道路の最高速度を段階的に100km/hから120km/hに引き上げる方針を発表しました。

そこで、今回、日本自動車ユーザー研究所(JACRI)では、高速道路の最高速度が100km/hから120km/hに引き上げられることに対して一般の自動車ユーザーはどのように感じているのかを把握すべく、調査を実施いたしました。

調査の概要

調査手法
(株)イード保有調査パネル「あんぱら」を使用したWebアンケート調査
調査対象者
自分専用、または家族と共用のクルマを保有している18歳~79歳の男女
調査対象地域
全国
回収サンプル数
合計1,100サンプル
調査実施時期
2016年6月
集計結果に関する
留意事項
スクリーニング調査で算出した各年代の車保有率と人口をもとに、ウエイトバック集計を実施

120km/hに引き上げることを知っていたのは、高速道路高頻度利用者でも50%程度

アンケート回答者を高速道路の利用状況に応じて、「高頻度利用者(週に1回以上利用)」、「中頻度利用者(月に1回程度以上利用)」、「低頻度利用者(半年に1回程度以上利用)」、「非利用者(年に1回以下)」の4つに区分して集計したところ、以下のような結果となりました。

高速道路の最高速度が引き上げられることについては、当然、高速道路の利用頻度が高いほど認知率は高いという傾向が見られましたが、高頻度利用者でもその認知率は50%程度であり、30%近くは「全く知らない」と回答しています。
これは、実際に来年から最高速度の引き上げが施行されるのが新東名高速道路(御殿場JCT~浜松いなさJCT、約145km)と東北自動車道(花巻南IC~盛岡南IC、約31km)の2区間に限定されるため、東北や関東、中部以外で認知率が低いことが影響しているものと思われます。

高速道路利用者の50%~60%は、最高速度120km/hを歓迎

それでは、高速道路の最高速度が120km/hに引き上げられることに対して、利用者はどのように感じているのでしょうか。

非利用者を除き、50%~60%が「望ましい」または「まあ望ましい」と回答しており、概ね歓迎の意を表していますが、ここで注目されるのは高頻度利用者の方が中頻度使用者より「望ましい/まあ望ましい」という回答が10ポイント近く低くなっている点です。
週に1回以上高速道路を利用している高頻度利用者の方が、最高速度引き上げのメリットを享受する機会は多く、よりポジティブな反応が得られると想定していたのですが、中頻度利用者の期待値の方が大きいという結果となりました。高頻度利用者は、現状の最高速度に特に不満を感じていない層も少なくないようです。

高速道路利用者は、安全性の問題よりも移動時間短縮の利便性に期待

次に、最高速度引き上げによる影響について、利用者がどのように感じているかについて見てみました。
最高速度の引き上げによって最も期待されているのは「移動時間の短縮」であり、高速道路利用者のほぼ半数はその利便性に期待しています。また、高/中頻度利用者では、「燃費向上」も意識されています。
他方、中/低頻度利用者では、3割程度が「重大な事故が起こりそう」、「高速と低速のクルマが混在」、「万が一の危険回避が難しそう」といったマイナスの影響も感じています。
高頻度利用者は、中/低頻度利用者に比べ、時間短縮の利便性や事故等の危険性に対する反応が低く、最高速度引き上げに対しては期待も不安もさほど高くないことが窺えます。

求められるのは走行性能よりも安全性能

高速道路の最高速度が120km/hになった場合、ユーザーがクルマに求める要素に何か変化は生じるのでしょうか。


走行性能と安全性能を切り離して考えること自体、やや無理があるのですが、最高速度の引き上げに際しては、走行性能よりも安全性能が求められるという結果となりました。

まとめ

最高速度引き上げの影響として「クルマの走行性能が楽しめそう」と回答しているのも1割程度であり、安全性がある程度担保された区間で120km/hでの走行が可能になったとしても、“クルマの性能を最大限に引き出して走りを楽しみたい”というニーズが顕在化する可能性は低そうです。

この記事の詳細につきましては、日本自動車ユーザー研究所までお問い合わせください。

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