同一車線自動運転技術「プロパイロット」搭載の新型セレナ発売
日産自動車は、2016年8月24日に自動運転技術「プロパイロット」を搭載した新型セレナを発売しましたが、当初4割程度と想定されていた「プロパイロット」の装着率は、予約注文段階で7割近くとなっており、ユーザーの自動運転に対する関心の高さが窺えます。
そうした状況の中、日本自動車ユーザー研究所(JACRI)では、一般の自動車ユーザーが自動運転技術「プロパイロット」についてどの程度認知・理解しているのかを把握するとともに、現状レベルの自動運転と将来的な完全自動運転に対する利用意向を理解することを目的として、調査を実施いたしました。
調査の概要
- 調査手法
- (株)イード保有調査パネル「あんぱら」を使用したWebアンケート調査
- 調査対象者
- 普通自動車の運転免許を保有している18歳~79歳の男女
- 調査対象地域
- 全国
- 回収サンプル数
- 合計1,100サンプル
- 調査実施時期
- 2016年9月
- 集計結果に関する
留意事項 - スクリーニング調査で算出した各年代の車保有率と人口をもとに、ウエイトバック集計を実施
運転に自信がないユーザー、クルマを運転する頻度も低い
今回の調査では、事故の軽減、渋滞の解消、燃費の向上といった自動運転の社会的意義ではなく、一般の自動車ユーザーの自動運転に対する意識を把握するために、アンケート回答者をクルマの運転に「自信がある」「まあ自信がある」「どちらともいえない」「あまり自信がない」「自信がない」の5つに区分して、集計・分析を行いました。
クルマの運転に自信があるユーザー(自信がある+まあ自信がある)の8割以上は、「週に1回程度」以上はクルマを運転しており、運転頻度と運転技術は概ね比例しているようです。
他方、「自信がない」というユーザーでは、7割が「年に1回以下」しか運転していないペーパードライバーとなっています。
「プロパイロット」が自動運転レベル2であることを理解、全体の4割強
まず、自動運転技術「プロパイロット」を搭載した新型セレナが発売されたことと、「プロパイロット」の自動運転レベルについて聞いてみました。
「自信がある」というユーザーの4割以上は「詳しく知っている」「知っている」と回答しており、運転に自信があるユーザーほどクルマに対する情報の感度が高いことがわかります。
ただし、「プロパイロット」という言葉を知っていることとその中身を理解しているかどうかは、あまりリンクしていないようです。
「自信がある」というユーザーでも、「プロパイロット」が“アクセル、ハンドル、ブレーキの複数を車が自動で操作するレベル(ドライバーはいつでも安全運転できるように対応)”というレベル2の自動運転技術だと理解しているのは、4割程度にとどまっています。
また、全体の2割近く、運転に「自信がない」というユーザーの3割以上は、「プロパイロット」をレベル4の完全自動運転技術だと勘違いしており、“自動運転”という言葉だけが先行している感は否めません。
“レベル4” 完全自動運転技術、利用意向伸びず
それでは、一般的なユーザーは自動運転技術についてどのように思っているのでしょうか。
レベル2の自動運転技術の利用意向は、全体では4割弱。
クルマの運転に自信があるユーザー(自信がある+まあ自信がある)の方が自信がないユーザー(自信がない+あまり自信がない)よりも利用意向が高い傾向が見られ、自信があるユーザーの“楽そう”というイメージが、自信がないユーザーの“運転技術を補ってくれる”という期待を上回った形となっています。
また、「自信がある」と「自信がない」でそれぞれ「利用したくない」の数値が高くなっている点も注目です。前者は、“自分には自動運転のサポートは不要”、後者は“そもそも運転しないので自動運転自体不要”ということなのかも知れません。
“アクセル、ハンドル、ブレーキのすべてをドライバー以外が操作し、ドライバーが運転に全く関与しないレベル”というレベル4の自動運転技術の利用意向は、全体では3割程度であり、レベル2よりも5ポイント以上低くなっています。
クルマの運転に自信がないユーザー(自信がない+あまり自信がない)でもその比率は3割強にとどまり、完全自動運転が実現したとしても、彼らをクルマに呼び込むだけのインパクトは、あまり大きくはなさそうです。
また、「自信がある」というユーザーでは、“運転の楽しみを奪われたくない”との理由からか、4割が「利用したくない」と回答しており、完全自動運転拒否層が少なからず存在していることがわかります。
まとめ
今回の調査を実施する前は、「レベル4の完全自動運転ならば、クルマの運転に自信がなくほとんど運転していないユーザーが、よりクルマを運転(実際はクルマが勝手に運転)するようになるのではないか」という仮説を有していたのですが、どうやら今のところそれはなさそうな結果となりました。
この記事の詳細につきましては、日本自動車ユーザー研究所までお問い合わせください。