日本自動車ユーザー研究所(JACRI)では、独自調査の第1弾として、近年急速に普及が進んでいる「自動ブレーキ」(自動車業界用語では「衝突被害軽減ブレーキ」)について取り上げます。
話題の「自動ブレーキ」ではありますが、『日々自動車を運転する上で、ユーザーがどのように感じているか』という、調査結果はこれまであまり公表されていませんでした。そこで今回JACRIでは、一般自動車ユーザーの自動ブレーキ使用実態にフォーカスした調査を実施いたしましたので、その一部をご紹介いたします。
調査設計における背景
「自動ブレーキ」が近年急速に普及している背景としては、以下のことが考えられます。
<ユーザー意識>
・以前よりも、『安全』に対してお金を払おうとする意識の高まり
・新車購入時の比較ポイントとして、デザインや居住性、燃費だけではなく、『安全性』も挙げられるようになる
・昨今、高齢ドライバーの増加によりブレーキの踏み間違いなどのミスをカバーする技術への関心が高まり、それに伴って、自動車メーカーも「自動ブレーキ」について積極的にアピールを開始
<技術面>
・カメラの画像解析技術、レーザー/レーダーなどの各種センサーの高性能化・価格低下により、安価で高性能なシステムの提供が可能に
・2014年から装着が義務化された「横滑り防止装置」(呼称:ESC等)により、ブレーキペダルを踏まずともブレーキを作動させる機能が標準化されたため、センサーと判定ユニットの追加で自動ブレーキが成立
上記のことを念頭に置き、調査設計を行いました。
新車乗用車の自動ブレーキ装備率が急速に増加
自動ブレーキの装着有無を尋ねたところ、新車を購入してから3~4年経過した人よりも、2~3年経過している人や1~2年経過している人といった、購入してからの期間が短い人ほど、自動ブレーキの装着率が高い結果が得られました。特に購入してから1~2年経過している人では、装着率が47.2%と高い数値を示しており、年々、自動ブレーキを重要視する人が増えてきていると言えるでしょう。
※ベース:当該期間の新車乗用車(軽自動車を含む5ナンバー/3ナンバー)
高齢者ユーザー(60代以上)は非常に重視している
購入時に「自動ブレーキ」をどのくらい重視しているかを聞いたところ、高齢者ユーザー(60代以上)の重視度が他の年代に比べ高く、「非常に重視した」が35.3%という結果となりました。購入後、5年、10年と乗り続けることで、「自動ブレーキ」が必要になるのではないか、と考える人が多いからだと思われます。
ユーザー全体の『4割弱』が自動ブレーキを経験
自動ブレーキの作動経験は、自動ブレーキ装着車ユーザー全体の4割弱という高い数値となりました。自動ブレーキが作動した結果、無事に事故を回避できているという結果も得られ、自動ブレーキの重要性が伺えます。
また電話調査で挙がっていた実例としては、
「通勤で帰宅時、渋滞のなかスマホを見ていてガツンとブレーキが作動した。ギリギリで止まった」
「朝、仕事に向かう途中でふと眠ってしまったが、ピーッという警告とともに作動した」
「首都高の合流でカーブの途中、合流で急に車間が詰まったが助かった」
など、事故の防止に有効であったと実感できる結果となりました。
ステレオカメラ方式は、満足度TOP2が9割越え
自動ブレーキの総合満足度は、ユーザー全体で満足計(非常に満足+まあ満足)85.9%という結果となりました。特に「非常に満足」の比率で見ると、ステレオカメラ方式が42.0%で、他の方式と大差をつける結果となりました。